桜のつぼみが膨らみ、春の足音が近づきつつある今日、3月10日私たち卒業生130名は、ここ加藤学園暁秀高等学校を卒業します。
と、このように始まる答辞を体育館で聞きながら、みんなに送られて卒業していく。それが、当然のように来る未来なのだと、つい昨年まで信じて疑いませんでした。当時、誰がこんな一年を予測できたでしょう。
だからこそまずは、このような状況下で卒業式を実施してくださったことに、卒業生を代表して感謝を述べさせてください。
本当に、ありがとうございます。
振り返れば、私たちは、異例づくめの学年でした。
自分の台の大学受験で大きな変更があるかもしれない、それを知ったのは、小学生の頃でした。私が暁秀を選んだ大きな理由の一つも、来る新入試に柔軟に対応していける先生方と、一緒に切磋琢磨出来る仲間がいると思ったからです。
暁秀高校での生活は、充実していました。勉強に、部活、暁秀祭をはじめとした学校行事。なんということのない普通の放課後に、友人と一緒に三階からの沼津の町並みと美しい夕焼けを見て、「あー、なんか楽しいことないかな。」と口癖のようにつぶやいていたあの時間も、今となっては大切な思い出です。
高2の後半。修学旅行が終わると、外部模試が続き、私たちは本格的に入試に向かって行きました。どう変化するか予測できない入試に立ち向かう気持ちは、不安そのものでした。
そして、そんな時にコロナはやってきました。当たり前が当たり前じゃなくなる、それを世界中の人々が経験することになりました。楽しみに準備を続けてきた最後の暁秀祭も、部活の大会も、全て中止。そしてなにより、普通の学校生活が送れなくなりました。
学校に行かなくていい。願ってもない夢のような日々のはずだったのに、それが本当はいかに不安で大変か、実際に体験して初めて痛感させられました。
しかし、この休校期間を通じて、暁秀で良かったという思いも強くなりました。オンライン事業への迅速な変更、その様子はテレビにも取り上げられるほどでした。 Google Classroom に担任の先生が投稿する文章や、みんなのコメントを読んで、ほっとしたり、元気が出たり、頑張る力をもらいました。
コロナと新入試が重なる中で、先生方は様々なことに配慮しながら、私たちを導いてくださったのだと思います。充実した3年間の学校生活があったのは、先生方のおかげです。いくら感謝しても、し尽くしません。
もう一つ、この場をお借りして伝えたい気持ちがあります。それは家族への感謝です。母さん、18年間、僕を大切に育て、支え、そばにいてくれてありがとう。一緒に笑い転げたあのときも、相談に乗ってくれたあのときも、そして感情をぶつけ合ったあのときも、数え切れないあなたとの思い出が、今の僕を形つくっています。母さん、僕を産んでくれてありがとう。4月から、僕はあなたのもとを離れます。あなたの腕の中で守られてきた僕が、これからは一人で歩いて行きます。どうか遠くで見守ってきてください。例えどんなに離れても、あなたはずっと、私にとって大切な、大好きなお母さんです。
さて、ここからは私たちの話をしましょう。今、世界はめまぐるしく変化しています。錯綜する国際問題、環境問題、そしてコロナウィルス。いつも通りの日常は、しばらく戻ってきそうにありません。常に、新しい事態への対応に追われることとなりそうです。私たち一人ひとりの能力が試されるでしょう。でも、この一年、異常事態の奈加で、自分の未来をつかみ取ろうと必死にもがいてきた私たちになら、きっと大丈夫です。思い出や経験は力になります。
この特別な一年は、私たちに遠く羽ばたくための大きな力を与えてくれました。
僕には見えます。みんなが自分の場所で活躍し、社会に貢献している未来が。
僕には見えます。みんなが大切な人たちに囲まれて幸せに過ごしている日々が。
十年後、二十年後、それが現実になる時に向かって、それぞれの道に、今日、私たちは第一歩を踏み出します。
最後になりましたが、母校のますますのご発展と、先生方のご健勝、ご活躍をお祈りし、卒業生代表の挨拶といたします。
令和3年3月10日 卒業生代表 趙子毅