暖かい陽の光が降り注ぎ、桜の蕾も膨らみ始め、春の訪れを感じる今日、私たち卒業生一〇四名は加藤学園暁秀高等学校を卒業します。本日は私たちのためにこのような厳かな卒業式を挙行していただきまして誠にありがとうございます。卒業生一同、心より御礼申しあげます。
三年前、新しい出会いや環境への期待に胸を膨らませる余裕もなく、未知なる感染症に振り回されたあの春から、私たちの高校生活は始まりました。
一年生の時はほとんどがオンライン授業で、学校に行くことも叶わず、目まぐるしく変化していく世の中についていくので精一杯でした。授業が終わり、真っ暗になったパソコンの前で、「いつまでこの生活が続くのだろう」と先の見えない不安でいっぱいだったことを今でも覚えています。それでも、少しずつみんなと教室で過ごす時間が増えていくたびに、画面越しではなく、面と向かって笑い合えることが、隣で授業を受けられることが、どんなに嬉しいか、気づかされました。
二年生の修学旅行は、奈良・伊勢地方を訪れ、最高に楽しい三泊四日の旅になりました。堂々とした姿に思わず感嘆の声が上がった法隆寺、他愛もない話に花を咲かせたホテルでの夜、伊勢神宮の参拝では「神様に何をお願いしたか」で盛り上がりました。どんな歴史ある建造物よりも、私たちの友情こそ何よりも唯一無二でかけがえのないものでした。
そして、三年生。高校生活最後の暁秀祭。それぞれのクラスが協力して作り上げた個性溢れる映像作品に笑い合った文化の部。練習の成果を存分に発揮し、応援団や両軍ダンスの素晴らしいパフォーマンスに歓声を上げた体育の部。胸が熱くなるような思い出に溢れたあの二日間を、いつか大人になったみんなと懐かしむ日が今から楽しみです。
この三年間、知恵を出し、工夫し、共に新しい時代を乗り越えていくみんなが、とてもまぶしく見えました。思い描いていたような学校生活ではなかったかもしれません。でも、できる限りのことをしてきた今までの思い出全部が宝物で、意味がなかったなんて思いません。
私は暁秀で将来の夢を見つけることができました。沼津の魅力を発信するために、友人と共に短編小説を執筆したことをきっかけに、地域の良さを広め、伝えていく活動の楽しさに気づき、大人になっても人と地域をつなぐような仕事をしたいと考えるようになったのです。IBを通じて培われた、世界や地域における問題を自分事として捉え、思考し、行動するこの課題解決力は、私に沢山の経験を与えてくれました。
勉強も、部活も、課外活動も、一人で成し遂げたことなんてたった一つもありません。「一緒にがんばろう」と声をかけてくれた友達。普段の生活指導から真剣な進路相談まで、常に親身になって向き合ってくださった先生方。そして何よりも、ずっと近くで私たちの成長を見守ってくれていた、家族の存在。これまで沢山喧嘩をして、心にもない言葉で傷つけてしまうこともありました。でも、お父さんやお母さんからの愛情を疑ったことはありません。そんな言葉も、行動も、すべて私のことを想ってくれたものだと今なら分かります。十八年間、本当にありがとう。
理不尽と、予想もできない困難が連続する世の中で、辛かったこと、苦しかったことはたくさんありましたが、それと同じくらい、卒業しても忘れたくない大好きな出会いと光景があります。この校舎を去っても、私たちの青春は終わりません。これまで暁秀で重ねてきた一瞬一瞬が、これから先の私たちを支え、導いてくれることでしょう。
最後になりますが、母校の更なる発展と、先生方、学校の関係者の皆様のご健勝をお祈りすると共に、全ての方に限りない感謝を込めて、卒業生の挨拶とします。
令和五年 三月十日 卒業生代表 駒走旬星