冬の厳しい寒さもようやく終わりを告げ、陽の光も明るく、やわらかくなり、学び舎から望む富士山は厚い純白のマントを脱ぎ棄て、衣替えの準備を始めています。
本日は、コロナ禍が収束を見ない中、またお忙しいにもかかわらず、先生方、保護者の皆様にご出席いただき、お祝いと励ましのお言葉を賜りましたこと、卒業生を代表いたしまして心より感謝申し上げます。
思い起こせば3年前、初夏のように暑い日に、私達はこの暁秀中学に入学しました。私は小学校時代からの友人が多くいたため、不安はありませんでしたが、これから始まる新しい生活や、新しい友達、先生との出会いにワクワクしたことを覚えています。
毎時間、教科ごとに代わる先生方に新鮮な驚きと期待で緊張したものです。
中学生活にもすっかり慣れ、2年生になってすぐ、私たちの学校生活は新型コロナウイルス感染症拡大のため一変しました。
今まで当たり前のように通っていた学校に通えなくなってしまったのです。
暁秀祭や体育祭、バザーの中止。そして部活の大会の中止など、今までの学校生活では考えられないことが次々と起こりました。
私は祖母から聞いていたことを思い出しました。
「人生には三つの坂がある、上り坂、下り坂、そして”まさか“という坂が。人間は上り坂にある時は有頂天になるだけで案外学ばないもの。下り坂とまさかの坂に差し掛かった時こそ学べる、不幸や不運は良き先生なのよ。」
コロナ禍はまさにその 「まさか」 でした。
このまさかを経験することで、私は毎日学校に通い、先生から直接指導を受け、友人と共に勉強し、語り合えるという当たり前の事が出来る日常がなんと素晴らしく、かけがえのないものか、そしてそれがどれほど幸運に恵まれたものだったかと分かりました。
3年生になっても新型コロナウイルスの影響は続き、暁秀祭や体育祭などの開催が危ぶまれましたが、規模は縮小されたものの開催され、私たちの大切な思い出となりました。
特に楽しい思い出は、一年待った修学旅行です。訪れた広島での語り部の方から伺った被爆体験講話は、8月15日に生を受けた私にとって、平和を願う気持ちを新たにさせてくれました。何といっても楽しかったのはユニバーサルスタジオです。私服で広い会場を回りながら、楽しい買い物で友達とおそろいのカチューシャを買い、食事の時間を忘れるほどアトラクションを楽しみました。夜はホテルで寝る時間も惜しんでふざけあい、語らいました。中学時代の最大の楽しい思い出となりました。
私が中学生活において頑張ったことの一つに部活動があります。バトミントン部で部長を務めました。私は最後の大会で予選を勝ち抜くことが出来ず、県大会に進むことが出来ませんでした。部長として部員を引っ張っていく立場にありながらそれを果たせず、ふがいない思いが溢れました。しかし、出場することだけが部長の役割ではない、最後まで皆を引っ張り、サポートすることこそ部長の務めと心に決め、大会を終えることが出来ました。
試合に負けた経験は私の心を一回り成長させてくれたと感じています。
中学の勉強は思っていた以上に大変でした。特に3年生になると定期テスト、実力テスト、模擬テストと息つく暇もないほどのテストの嵐。しかし、友人達と互いに教え、教わりながら高め合うことで難しい課題にも取り組みました。
正直、つらく投げ出したくなる時もありました。でも隣で頑張っている友の姿を見て自分も頑張らなくてはと勇気づけられました。
多くの友人達とは、高校でも共に学ぶ事が出来ます。これからも互いを高め合いながら頑張っていきたいと思います。学習の中で、好きと思える教科が見つかったことも3年間の成果の一つです。高校ではそれを更に確かなものにして行きます。
私達がこの3年間頑張ってこられたのは、ひとえに先生方のおかげです。
どんな絵でも、良い点を見つけ、ほめて下さった優しさ溢れる先生。
虫メガネ片手にどこに書いてあるか探しても発見できない問題で私たちを悔しがらせた先生。でも、お陰で学ぶ楽しさを知りました。
生徒一人ひとりの長所、短所を見極め実に厳しくも、的確なアドバイスを下さった先生。
生徒全員を厳しくも温かく包み込んでくださった、まるでお母さんのような先生。
教え方が実に理にかない、思わずそうかっ!納得!とうなづかされた先生。
挨拶をはじめ生活態度への厳しいご指導で社会の常識を身につけさせて下さった先生。
決して押し付けではなく自分の力で勉強する楽しさを教えて下さった先生。私はこの教科では誰にも負けたくないと思うようになりました。
同じ目線で生徒と向き合い、教えて下さった先生は、昨年お父さんになられましたね。赤ちゃんの15年後は今の私達ですからね、覚悟しておいて下さいね。
そして、今日まで夢に向かって頑張ってこれたのは、全力で応援してくださった家族のおかげです。本当にありがとうございました。
私達は、今日、暁秀中学を卒業します。
明日からの私達には下り坂、まさかもあるでしょう。そんな時も友とあゆみ、先生方にお教え頂いたことを糧として、乗り越え進んでいくことをお誓いし、卒業生代表の挨拶とさせていただきます。
令和四年三月十日 卒業生代表 大畑文乃